印鑑選びについて
ここでは、意外と知られていない印鑑のことについて、
役に立ててもらいたいとの思いから、店主が綴ります。
あなたにたいして、ハンコ(印鑑)の果たす役割とは?
判りやすい例えとして、印鑑を使った金融機関からの預金の引き出しの場合です。
免許証などで本人と確認がとれても、届け出印(口座を開設するときに届けた印鑑など)が無ければ1円たりとも金融機関から引き出す事はできません。
これは、※示信の具(ししんのぐ)としてハンコが使用され、
証拠を残して証明する必要があるためです。逆に言えば、本人以外の者であっても記載内容に間違いなく、届出印が押してあれば、お金を引き出す事ができるということです。(高額の引き出しは本人確認が必要になる場合があります。)このことは
本人に代わりハンコが証拠を残して証明しているのです。
ハンコは本人の意思の有無とは関係なく、
権利や義務などの重責を担っているという一面があるということです。
※1.参考文献。水野恵著『印章篆刻の栞』1978 芸艸堂
「当人が、限定された記載事項を証拠を残して証明する」行為を「示信行為」と言い、
その証明を「示信」と言います。そして、その方法であるハンコ、サイン、
その他をひっくるめて「示信の具」と言います。
「何故ハンコを捺さねばならないか」という事は、一先ず示信のためだ、
示信が必要だからだ、示信の具の中でハンコを選んでいるのだといえます。
ハンコとは示信の具の一つです。
そのような重責を担うハンコに求められる条件とは何でしょうか?
ただ単に高額なハンコでもなく、縁起のよい文字で彫られているものでもありません。
『オリジナルの文字で彫られ、長い年月の使用に耐えられる彫り方で、鮮明に押せること』
が重要です。これらを備えているハンコを選ぶことがコツの一つと言えます。判りやすく言うと、彫られたハンコに手彫り技術が生かされていると言うことです。これらには、すべて専門的知識や手仕事としての技能(技術)が求められますが、機械を道具として使いこなし部分的に手間を省いても、すべて手作業で行っても彫られたハンコが条件を満たしていれば問題ありません。
条件を満たしたハンコ屋を見極める方法とは?
■第一に手彫り技術の証を明示してあるお店で有るか否かではないでしょうか。社会には様々な技能職種があり、印鑑にも印章彫刻技能士という資格があります。印章彫刻の技術を学んで修得した証であり、その資格者が彫っていることが判断材料の一つになるでしょう。
■第二としては、印鑑の書体見本(文字見本)が、お店のオリジナルであることも判断のおおきな要素になると思います。文字の書体は、一般の方にとって判りにくいので、書体見本を大きくはっきりと明示しているなど、消費者へ、より丁寧な説明に努めている姿勢も見極めるひとつになります。
■第三には、はんこ(印鑑・印章)は、技能職種のなかでも、同じように多くのものを作り上げる技術職とは違い、クオリティ(品質)はそのままに、変化に富んだザ・オンリーワン(唯一無二)の、ものづくりが求められますので、
ハンコをただ単に取り扱い商品のひとつであるようなサイトや販売店は注意が必要です。そして、極端に安価な値段設定をしているところは、条件を満たす手間をかけていないとみるのが無難です。逆に、高額なものなら安心だろうと考えるのも要注意でもあります。
要するにスタンダードを見極めることです。目を引くファンシーな印材・安心保証・かわいい絵入り文字・開運書体などの二次的な要素をいったん考慮から外して見ると、意外と見極めはつくと思います。
飾りを取り除いて「素(す)」で見極めた後で、自分に合ったものを探すことが印鑑選びのコツです。
以上のことを参考にハンコを選ばれるのなら、長く付き合うに相応しいハンコを手にすることができると思います。少し堅苦しい内容になりましたが、最後まで読んでいただけたら幸いです。