楷書体の印鑑を彫ってみた
私の自用印ですので、公開します。
唐代の楷書の名手・欧陽ジュン(言偏に旬)の代表作
(九成宮レイ(酉偏に豊)泉銘)を見本に彫ってみた。
碑文に彫られ、文字間は広く整然と並べられており
印として枠の中に閉じ込められた空間では生かされない部分を
改めて感じたが、基礎的な勉強として捉えています。
フォントでも完成された楷書がありますが、
自分で文字の余白の取り方や特徴を見つけながら
書き、彫って仕上げを行わなければ、仕上げで手は動かない。
ふと思い出した言葉が胸中成竹(きょうちゅうのせいちく)です。
「胸中に成竹あり」は、創作する中でとても大切なことです。
意味は、 成功の見通しを立てておいて、前もって準備しておくこと。成算のこと。
竹の絵を描く時は、先に胸中で絵を完成させておいてから一気に描くという意味から。…
文字デザインがいくら良く出来ていても、仕上げの段階で手が動くとは限らない。
そうならない為に準備は必要ということでしょう。
手本のない書体は大変
行書体+古印体(※切り離さないようにした)
AA-1
最初に仕上げたのがA、その後、補刀したのがA-1。サイズは12ミリ丸。
読みやすいことに加え、ツナガリが行書体の特徴ですが、印にするとやはり
一般の方には、文字フォントとの違いが判り難いので古印体を加味して
文字フォントではできない印にしてみました。
少し遊びを加えて?
最古の土偶(滋賀県・相谷熊原遺跡)。1万3千年前のものとされている
縄文の女神を見て思わず彫りたくなってしまいました。
女神のフォルムを枠の形として最初にデザイン
枠に合う文字を考えて、
文字は20種類ぐらい書いてみましたが、この変形した枠にどうしても合わない。
翌日になって、ふと思いついたのが、一風変わった口でした。
まあ自分が使う自用印ですから、こんな感じもいいかな…と
遊びの印に大切な事は枠を含めた全体の表情でしょうか、
奥が深いこのエリアは感性が占める領域。
出来のいい悪いはともかく、縄文の女神を見たときの感動が
生かされいればいいかな…と
(天地は10ミリ弱の印。)
自用印を意識すること
自己表現としての仕事をされている方は多くいます。
例えば芸術家。書家・日本画家・版画家・など、自分の作品というしるしとして
印を押しますが、印にもこだわりがあり、多くの印を持ちながらも
実際に使用する印は2~3個(印を数えるときは、カ(果に頁))といいます。
気に入った印とは、彫り手の側ではなく、使う側が決めること。
どんなにいい印が出来たと言ってもだめなんです。
相手の感性に合うものを作る姿勢も大事なこと…
まだまだ先が長い、ゆっくりと階段を登りましょう。